メガネ手帖

メガネ手帖

メガネが綴る日々の出来事、妄想、空想、よしなしごと

金玉はなくなってない

実はいろいろあって入院していた。下腹部から金玉にかけての部位に違和感があり、病院に行ったら手術が必要だと言われたからだ。

どうにも気持ちが悪いなということでいざ病院に行ってみたはいいが、よく考えたら金玉を医者に見せなければならない。これはイヤだな…と思っていたら、なんと担当医師が女医さん(推定年齢35〜45歳)になってしまった。論理的に考えて、僕は今からこの女医さんに金玉を見せざるをえないことになる。マジか。

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最初の診察の時の僕の動揺は大変なものであった。女医さん…恥ずかしいな…と思いながら症状を説明すると、「では、患部を見せて下さい」と冷静な顔で言われる。いや、まぁ当たり前なんだけどなんかドキッとする。思わず「…今ですか?」と聞いてしまう。今でしょ。思わず林先生の顔が頭に浮かんだ。今に決まってるでしょ。僕は勇気を出してパンツを降ろす。女医さんは冷静な顔で僕の金玉を眺め一言「ああ〜これは大きいですね」と言った。

なんだろう、ものすごく恥ずかしい。言われたこともそうだが、そもそもここまで冷静に金玉を凝視されたことなんてない。これはキツい。なにかそういうプレイだと思うしかない、と思ったが、それはそれで事態は別の方向へ展開してしまう可能性がある。耐えるしかない。さらにプレイ、じゃなかった診察は続く。ちょっと触りますね、と言うが早いか女医さんは僕の金玉を揉みだした。すごい真面目な顔で金玉を揉んでる。これは痛いですか?など確認しながら、あらゆる角度から揉む。そんなに揉まなくてもいいんじゃない?ってくらい揉む。その間僕は、これ以上揉まれたら追加料金が発生してしまうのではないか、などと考えていた。

そして女医さんは尋ねる。「症状はいつからですか?」この質問には困った。いつからか、と聞かれるとそれは中学時代にまで遡るからだ。

中学生。それは多感な時期。クラスメイトのおちんちんに毛が生えているのかいないのか、ムケているのかいないのかが気になって仕方がないお年頃だ。必然僕も、皆で風呂に入る時なんかにチラチラと友達のモノをチェックし、自分のものと比較検討し、1つの結論を導き出していた。どうやら僕の金玉は他の人よりもやや大きいようだ、と。

「おちんちんが大きい」なら自信にもなろう。しかし金玉である。なんの自慢にもならない、むしろちょっと恥ずかしい。今なら「男の価値はおちんちんではない」と胸を張って言えるが、純真な中学生の少年にはショックな事実ではあった。かくして少年は、銭湯では前を隠して入る男になってしまったのだった。

余談ではあるが、銭湯に入る男には2種類いる。前を隠して入る男と、丸出しで入る男だ。そしてわざわざ丸出しで入る男のおちんちんはやや大きい(気がする)。たぶんこれには相関関係がある。つまり、丸出しで入る男はその大きさを自慢しており、隠して入る男に対して優越感を露わにしているのだ。そこにはある種のヒエラルキー(おちんちんヒエラルキー)が存在している。しかも、おちんちんの大きさはほぼ生まれ持ってのモノだろう。つまり、僕らは生まれながらにしてヒエラルキーが決まっているのだ。これはもうカースト制度と言っていい。おちんちんカースト制度だ。僕らはこのカースト制度から逃れる事はできないのだ。

えっと、なんの話でしたっけ。完全に話がそれた。なにがおちんちんカースト制度だ。そうだ、「いつからですか」と聞かれたら困る、という話だ。

僕は中学生からこの金玉と寄り添って生きてきたんだ。今さらそれは間違いでしたなんて言いたくない。あと、実際には半年前くらいから明確に「下腹部と金玉の間を内臓が移動するような違和感」を感じていた。そういう意味では、25年前からとも言えるし、半年前からとも言える。なんと答えればいいんだ。このような様々な思いが僕の中を駆け巡り、即答を困難にしたのである。

…というような苦悩が色々とあったものの、最終的に出た診察結果は「鼠径ヘルニア」というものだった。本来はお腹の中にあるべき腸や腹膜が、下腹部の筋膜の間から皮膚の下に出てくる病気です。僕の場合は「脂肪」が「金玉」に流れ出ていく、という症状でした。なので、脂肪をお腹に戻して筋膜を補強する手術をした、ということであり、金玉は取り除いてはいません。

また経過観察結果なんですが、良好です。全く問題ありません。色々と心配して下さった皆さんに「元気ですよ、大丈夫ですよ」とお伝えしておこうと思っただけなのに、ずいぶん遠いところに来てしまった気がする。

たぶんこれを読んでくださった方には「元気ですよ」の部分はしっかり伝わったと思うけど、「大丈夫ですよ」については別の心配が生まれてしまったかも知れない。メガネ君、頭、大丈夫?