メガネ手帖

メガネ手帖

メガネが綴る日々の出来事、妄想、空想、よしなしごと

売り切れ御免

買い物に行くと、いつもお洒落なお店の店員にビビってます。

なにしろ彼らは職業として服飾の専門家を選んでるわけで、その「こだわり」たるや相当なものだと思う。その彼らに自分の服装を見られるわけだ。きっと心の中で「ププーッ、こいつダッセェー」って思ってるに違いない。

でも僕だってそのまま引き下がってるわけにはいかない。彼らだって自分の「こだわり」のファッションをしているわけで、それを僕が心の中で「ダ、ダッセェ!」とか思ってやれば、もう立場は逆転だ。そんなことを考えることで、僕はなんとか心のバランスを保っている。とてつもなく根暗だと思う。

そんな僕だが、こないだのバーゲンでは店員がみんなカッコよかった。なにげない着こなしがキマってる。このままじゃダサいのは僕だけになってしまう。そんな焦りの中、1人の店員の服が目に止まった。彼女が着ているTシャツには「Sold out!」って書いてあったのだ。

ソールドアウト。直訳すると「売り切れ」ってことだろう。彼女は胸に「売り切れ!」って書いたTシャツを着てることになる。さしずめ「私は売り切れてるのよ!」ってことか。

ファッションとは自己主張であり、自己主張とは「願望の裏返し」だと思う。

そう考えると、彼女の「私は売り切れてるのよ!」という主張は、 逆に言えば現時点で彼女が「売り切れてない」ことを表してはいないか。『売れ残り』そんな言葉が僕の頭をよぎり、彼女を見る目が変わってくる。そう言えばこの人、なんか幸薄そうな顔してる。

「お客様、なにかお探しでしょうか?」

営業スマイルで話しかけてくる彼女。どうしよう、その姿に思わず涙が溢れてしまいそうだ。なんてけなげなんだろう、売れ残りのくせに。そんな媚びるような笑顔までして、自分を安売りするんじゃないよ。

…『バーゲンセール』ってそういう意味だったのか!